目に見えない信号やノイズについて
この記事は Akerun Advent Calendar 2020 - Qiita の24日目の記事です。
初めまして、 hiro_kawa です。2020年3月からPhotosynthの開発部で電気設計を担当しています。今年は久々に一担当としてガッツリ電気設計を行うことが出来て、忙しいながらも楽しい一年だったな~と思います。ホントあっという間でした。
さて、私からは電気設計関連のお話をさせて頂きます。 電気設計で取り扱いが難しく注意が必要なのは、目に見えない信号やノイズです。 電波や磁界、静電気など、種類は様々。静電気の場合はパチンと光って見える事もありますが、その後の電流の流れまでは見えません。 Photosynthに入社してからも、いくつか新しい発見や経験ができたので、その事例をご紹介します。
波形測定の際に
NFCカードリーダーの電源波形をオシロで確認していた時に、大きなリップルノイズが確認されることがありました。ICが正常に動作しない、場合によっては壊れてもおかしくないレベルです。プローブをあたる位置でレベルがかなり変動しており、NFCのアンテナに近い位置だと特に大きくなります。
そこで、その波形の時間軸を拡大してみると13.56MHzの信号を発見、NFCの周波数です。
その時は手軽に信号をモニターするためにパッシブプローブを使い、写真のようなリードクリップでGND接続をしていました。
実はこのGND線のループが悪さをしており、NFCのループアンテナとリード線とのかぶり加減でノイズレベルが変動している事がわかりました。パッシブプローブなのでインピーダンスが高く、プローブ自体がアンテナとなってNFCの電波をひろってしまっていた、という訳です。
画にしてみるとこんな感じでしょうか。
プローブ線のループが大きいほど、その中を通る磁束が増えるため、NFCの信号を拾いやすいという原理です。
そこで、ループを小さくするため、プローブ付属のバネ接点にGNDを変更すると、ノイズレベルはぐっと低減して、安定した信号を確認することができました。
これなら問題ないレベルです(これでも若干ノイズを拾っていますが)。 更にアクティブプローブにすればより正確な波形が確認できるでしょう。
ちょっとした波形確認の時でも気をつけないといけないな、と思いました。
静電試験の際に
カードリーダーの静電試験を行っていた時のこと。
※静電試験の概要については以下サイトなどご参照下さい。
カードリーダーを試験卓と水平に横置きし静電気を印加すると読み取りが出来なくなる症状が発生しました。
一方で実際に設置される環境通り、縦置きでの静電気印加では問題ありません。 しかも横置きでもカード読み取り部を上にし下側から静電気を印加しても問題ありません。 カード読み取り部を下にして上から電極に静電気を印加した時にのみ問題が発生します。
ここでのポイントは、試験サイトのテーブルには鉄板が敷かれていることです。図にしてみるとこんな感じです。
NFCのループアンテナを挟むような形で静電気を印加した場合に問題が発生しています。 そこでアンテナが静電気の誘導ノイズをひろっているのではないか?と想定しました。 NFCのデバイスとアンテナとの接続部分を分断し、同条件で症状確認してみると、問題は発生しなくなりました。
原因が特定出来たので、そこを対策しようとなる訳です。
アンテナの性能が良い方が、よりカードを読み取りやすい訳ですが、その分ノイズ影響も受けやすくなります。 アンテナ性能を保ちながら、ノイズ影響は受けにくくする工夫が必要で、そこが設計の面白いところですね。
終わりに
上の2例は電気設計者ならわかりやすい内容だと思います。 他の事例では、動作中の基板の写真を撮ろうとフラッシュをたくと誤動作が発生、ということもありました。この原因はどのように推察されますか? これも調べると興味深いことがいくつかわかったのですが、そのお話はまたの機会に。。。
仕事の上では問題は起きないに越したことはないですが、私なんかは問題が起きると少しワクワクします。 というのも、その問題を解決することで新しい発見や勉強になることが多々ありエンジニアとして成長できるからです。
Photosynthでは、そんな経験が出来ると思いますので、ご興味持たれた方がいらっしゃいましたら、是非、ご連絡下さい。 ひょっとすると来年この記事を見た方と一緒にお仕事しているかも知れませんね。 そんな事になったら嬉しいです。では、皆さま、良いお年を!!
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